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☆『地図にない町 - ディック幻想短篇集』――乱反射する白昼夢の中で
※この記事ではひっさしぶりに、他のブログにトラックバックを送ってしまいました。ああすいません。「わしには,センス・オブ・ワンダーがないのか?」さんのこちらの記事この『地図にない町』についての記事ですので、作品紹介の文章があります。先行情報を気にする方は注意!)と、下のジャンル論で触れる「アルファラルファ大通りの脇道」さんのこちらの記事です。おおぎょるたこさん、Takemanさん、トラックバック失礼しました、ありがとうございました。
 あと、どうにもトラックバックが上手く送れなかったのですが、記事の紹介ということで、「時間旅行〜タイムトラベル」さんのこちらの記事へのリンクも貼っておきます。どちらも右でリンクしているサイトなのですが、物語好きにはたまらないサイトだと思いますし、どんどんリンクしてしすぎることはないかなーと。

 存在するはずのない駅で列車が止まる。駅前にひろがるのは地図にない町、そこで目にするものは? 幻想味あふれる名篇「地図にない町」をはじめ、ぜんまい仕掛けのおもちゃが子供を支配しようとする「おもちゃの戦争」、子供にお菓子をご馳走する不思議な老女の話「クッキーばあさん」……名手フィリップ・K・ディックが黄金の50年代に発表した幻想、怪奇、SFなど色とりどりの傑作短篇群から独自に編纂した珠玉の12篇!
 そろそろ長編を読もうと思いながらも、ちょくちょく行っている古本屋でこの本が100円で売ってて、うおおとテンションが上がってそのまま読みました。
 作品の紹介文というかあらすじというか裏表紙の文のとおり、いろいろな要素のアイデア・ストーリーなので、ファンタジーのカテゴリーに入れていいかどうか迷ったんですが、まあいいやと思って入れてみました。ちょっと脱線ですけど、ジャンル論、とりわけジャンルの「正しさ」の論争はかなりむなしいものだと思ってて、以下の2点の理由からそう思ってます。
 1、曖昧でなくジャンルを確定するには、諸作品を束ねるための中心(化)が必要だし、境界線が必要になる。とすると「真の」とか「本当の」なんて物言いが必要になるけど、大体そういったものは争いを生むし、他の要素(よくあるのが神的なものによって保証するとか)をひっそりと混ぜなきゃならないから。よく近代哲学で批判されてる点と似てるかなー。
 2、ある総体があったとしてそれが変化しないわけがないから。SFで言えば「ガンダムはSFか?」みたいな論争があったらしいけど、ガンダムがSFであるかないかは知らないけど、「SFであるかもしれないし、ないかもしれない」というところが重要だと思う。どんどん作品が増えれば総体は変化するし、これはちょっと「正しい日本語」みたいなものに対する疑問と似てるかなー。辞書だって版を重ねて変化するし、そこで示された総体はあるタイミングの誰かによる切り取った一瞬に過ぎないんじゃないか、と思うので。
 ってわけで、ジャンルなんてものは曖昧さを許容する大きなジャンル、ファンタジーとかSFとかミステリーとか、そういう風に使うか、それが耐えられなければ、たとえば「ほぼ『指輪物語』をベースにした世界観に、もろもろの多神教神話を混ぜて、ちょっとゾロアスターも混ぜて、80年代以降のアニメ的想像力から生まれたキャラクターが活躍して、世界の法則はコンピューターゲーム以前のRPGを基礎にしている物語」とか、やたら細かく指し示すしかないんじゃないかと思う。もはやジャンルとして、枠組みとして通用しないと思うけども。だから僕は曖昧なものとして考えてます。
 参考として、このことに関して面白かった文章を紹介します。冒頭でも書きましたが、このブログからリンクしている「アルファ・ラルファ大通りの脇道」さんのこちらの記事です。文中で引用されている考え方に全面的に賛成だなー。

 脱線終わり。ちょっとじゃなくなっちゃったような気もしますが、ええと、全体的に面白かったのですが、僕のボキャブラリーで言うと『世にも奇妙な物語』的に面白かったです! ははは、言葉が足りない……。で、特に表題作の「地図にない町」ですね。これに関してはおすすめ星ふたつぐらいよかったです。
 では、続きはネタバレしながら。
 
 
 
 
 僕はそういうのが好きなんですけど、異世界や違和感をちらりとのぞかせて終わる、というような展開が多いですね。まあラストに見せる作品だけではないですが、そうやって現実を侵食するってのはやっぱ好きです。
 んで、そんな感じの中でも以下の3篇が面白かったのでそれをとりあげてみます。

・「おもちゃの戦争」
 これはおもちゃの兵隊が人間の世界を征服しようと目論む話……だけでも面白いのに、ぬいぐるみたちまでもが動き出すのがいいですね、そういう意味のタイトルだったのかーと。と、同時におもちゃの兵隊が動く話でありながら、おもちゃのぬいぐるみが動くとは思っていなかったこと、そしてそれに気づかされたこと、ここにやられたなあ。

・「あてのない船」
 エルウドッが街中で途方にくれる描写が利いてます。P.222ですね。単純に描写として上手くていいんですけど、あの日常の、まさにありふれた日常にこそ違和感を感じるところがいいです。これは最後に挙げる「地図にない町」とも重なるので、そちらでもうちょっと。

・☆☆「地図にない町」
 表題作のこの作品を好きな人は多いみたいですが、やはり僕もこの作品はよかったですね。トラックバックさせていただいた先のおおぎょるたこさんと同じく、こないだテレビでやってた『千と千尋の神隠し』の電車のシーンを思い出しました。この作品のメイコン・ハイツの雰囲気が、『千と〜』のあの線路や駅の雰囲気と直接的に似ているわけではないのですが、もしかするとこれは見知らぬ駅、というより降りたことのない駅に感じる何かが共通するのかなあ。何度も通っていながら意識しない場所、ホームしか知らない場所、その向こうはどうなっているんだろう? そしてここで降りていくほかの人々がいて、そこにもまた彼らの日常があるはずだという不思議な感覚が。あるんだけど、いるんだけど、わからない、はっきりしない。P.261-2のメイコン・ハイツで降りる「長身の男」の体が宙に浮いていることと、『千と〜』での乗車客たちの半透明の体を思い出しながら、そんな風に思いました。
 で、彼らがしっかりと地に足をつけ、くっきりとした姿を見せる可能性、つまり未知が既知に変わる可能性があるんだろうなと思うわけです。と、同時に既知が未知に変わる可能性もまた。この話で言えば、メイコン・ハイツに降り立つこと、そして自分の生活世界が変わってしまうこととかでしょうか。これが解説で書かれている「現実の世界にはねかえってくる」(P.278)白昼夢ということなんだと思うのです。
 そしてそして、「あてのない船」で日常にもまた違和感を感じさせる、日常もまた白昼夢のように感じさせる描写から考えること。ここで僕は、日常が「偽」の世界で、「あてのない船」のラストで垣間見た大洪水の世界が「真」の世界だといいたいわけではありません。真偽ではなくて、乱反射する白昼夢の中で決してつかみきることのできない「現実」を描くこと、そしてそれに「リアリティ」を感じてしまうことに興味があります。まあ「興味があります」とかじゃなくて、ここで何か気の利いた引用だとか、考察を見せてしかるべきなんですけどね、卒論でやっとくべき辺りだったから……。で、先のジャンルの話に戻れば、それでもなぜ「ジャンル」というものを感じてしまうのか、ということとも似てるのかもしれません。ファンタジーに対する興味もまたこの辺りが近いです。ファンタジーに感じる「リアリティ」とはなんなのか、そもそも「リアリティ」とか「現実」ってなんなのか、みたいな風に。

 だいぶ自分でも何を書いてるかわからなくなってきましたが(ああ、これもまた白昼夢のようだ)、こんなことを考えました。こんな風にない頭と知っていながらもついつい絞らせてしまうのが、ディックの作品の好きなところです。もっと読みたいなー。
| ファンタジー近辺の作品 | 16:45 | comments(2) | trackbacks(1) |
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コメント
私が初めてP・K・ディックを読んだ短編集がこれで、以後すっかりディックにはまってしまいました。
それと、拙ブログにコメントとリンクをありがとうございます。
私もいつでも読めるようにブックマークを貼らせてもらいますね。
よろしくお願いします♪
| けいちゃっぷ | 2007/04/19 8:46 PM |
 こんばんは、コメントありがとうございます。
 P.K.ディックは、なんかわかるようなそうでないような、頭がぐにゃぐにゃするような感じで好きです。読んでない本がたくさんで(ディックだけじゃないんですけど)楽しみです。

 あいやー、コメントもリンクも勝手にやったことなんで、ありがとうございますだなんて、そんなー。SFやミステリーの記事は読みたいですし、さらに広島の記事もあるなんて、そりゃあリンクするしかないじゃないですか!(笑)

 この自分の記事に、けいちゃっぷさんのところの【SFは死んだのか?】の記事と重なるところがあるので、それについてちょこっとだけ触れさせてください。いや、まったく僕がぐだぐだと書いたところで言いたかったことがずばり書かれてたので。そう「『坊主憎けりゃ・・・・』じゃ、説得力がない」ですよねー! いろんなときに思うことなのですが、個々の問題を一般化するとき(もちろん、こういうことはいろんな場面で必要なんだろうけど)は、気をつけなきゃなーと思います。

 最後に、今日は結構忙しくてちゃんとラジオ聴けなかったんですけど、残念でしたねー。明日からは僕のひいきの2チームが対戦するわけですけど、どちらもいい試合をしてほしいですね! んではー。
| 智洋 | 2007/04/19 10:31 PM |
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