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☆『イルカの島』――海を、あのころを想う
評価:
アーサー・C. クラーク
東京創元社
¥ 504
(1994-02)
 密航したホヴァーシップが沈み、ただひとり海上にとり残された家出少年のジョニー。彼を救ったのは、なんと一群のイルカたちだった。彼らに運ばれていった先の孤島では、科学者たちがイルカ研究のために暮らしていた。しかも、所長はイルカ語を解し、このイルカたちも人間と意思を通わせることができたのだ。名匠が、大海原の神秘と景観をあますところなく描いた海洋SFの傑作。
 『家族八景』の記事を読んだ方には繰り返しになりますが、実はあっちの本によって読むのをあとに回されてしまった本です。ですが! 僕個人的な資質の問題もありますが、これはほかの小説と平行して読むべきではない、大事に読むべきだと思った、ということでもあります。
 Amazonのレビューでも書かれていましたが、たしかに夏の100冊に選ばれてもいいと思いました。ジュブナイルか教養小説か、まあそれらの区別が自分の中でちゃんとついてないんですけど、主人公ジョニーとはもっと早く出会いたかったとも思うし、だけどいま読んだのだってやはりすばらしい出会いでした。
 また、海はもちろんのこと、ほかのものも含めとにかく描写がすばらしいです。素敵なシーンがざくざくあります。ちょいと既読の方向けの話も混ざりますけど、解説P.221辺りの現代の作品批判の仕方には首を傾げたくなるものの、たしかにこの作品はすばらしく、ジュブナイルを探している人にはとにかく勧めたくなる本です。

 ってわけで、あとはネタバレありでちょっとだけ。
 
 
 
 
 いやー、繰り返しですがなんといってもまず描写がすばらしいですね。たった3ページでジョニーは家を飛び出しますが、そんなシーンだって「空気の凛とした美しい晩で、ほぼ満月に近い月が眠る風景をすみずみまで照らしだしている」(P.8)とか、その中で点滅する赤い標識灯とか、美しいなあ。ホヴァーシップが沈んだあとの、光る海や夜明け、あとは初めて珊瑚礁の外に出たときに見た青い深い水の世界とか、まあ挙げればきりがないんですけど、場面場面がとにかくすばらしいです。
 P.142辺りで語られる、過去地球に宇宙船が飛来していた物語なんかも素敵だったけど、そんな物語やイルカやシャチとのコミュニケーションを、可能性のまま残しておいていちばんの山場はあくまで可能性の一端を示すものとしての、ジョニーとイルカたちの冒険/試練であって(そういえば、ここのシーンって「波乗りジョニー」だよなあ!)、可能性をそのまま残しておくところなんかも(そしてそのために勉強しなきゃ、ってなるところも)ジュブナイル的っていうか、胸が熱くなるなあ。僕も、まだまだがんばろうと思います。ここは素直にそう思っておきたいです。

 これからやろうかなと思ってる形式で、文末に自分の知ってる範囲というかまあリンク貼ってるサイトとかで、同じ本を紹介してる記事があったらそこにリンク貼ろうかなと思ったのでやっときます。

・関連リンク
 「モラトリアム」さんの「SF読もうぜ(89) アーサー・C・クラーク『イルカの島』」
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『イルカの島』 アーサー・C・クラーク
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