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☆☆『新版 指輪物語〈2〉旅の仲間 上2』
シリーズ作品リンク     5と6 7 8 9 10
とても便利な「中つ国Wiki

 さてさて、前巻の最後でバック郷についた一行ですが、この巻ではさらなる苦難が待ち構えています。解説で、「異常に凡常の対比や、悲喜や明暗の対偶も、作者の古典的なリズム感の作法かと感じます」(P.265)と書かれていたり、また2002年の春に出たユリイカの増刊号「『指輪物語』の世界」の中でル・グィンが「『指輪物語』におけるリズムのパターン」(これ読むと、英語で読むと日本語訳では気づかなかったよさがあるんだろうな、とかさらには“原語”ではさぞ美しかろう! と思います)で指摘されてることを考えると、前の巻が全体的に明るかっただけに、あと先の話だけど裂け谷につく直前までの話なだけにこの巻は暗いんだろうなあ、と。
 あと、この作品を初めて読む方へ注意! この巻付属の解説が結構ネタバレしてるから気をつけてください! あの不意打ちはひどいよー。

 では、あとはネタバレありでつづきます。
 
 
 
 
 
・なにはともあれトム・ボンバディル! 彼に限った話じゃないけど、本当にこの作品は背景を感じさせられまくりで、中でもトムの存在はすごく不思議で読んだ人みんな気になるんじゃないかなあ。神話の中でも正体が明かされているわけではないみたいだけど、そんなところもすてき。
 トムは川や木よりも先にここにいた。トムは最初に降った雨の粒、最初に実ったどんぐりの実を憶えている。(P.61)
 上の辺りから、中つ国そのものというか化身というかそんなような存在なんではないかと妄想してしまいます。「上着は派手な青で、長靴は黄よ」(P.43)とかどことなく海と陸っぽいし! まあ緑がないんだけどね……あっ、ゴールドべりが緑かも!
 長い黄色い髪の毛が波をうって両肩に流れ、着ている長衣は緑色でした。それは萌え出たばかりの芦の緑色で、露の玉のような銀の粒がちりばめられていました。(P.40)
 あああ、妄想が止まらないー。

・トムの家で美味そうなご飯のシーンを見て思い出した。『指輪物語』って結構ご飯のシーンが出てくると思いますが、その辺りについて井辻朱美のこんな指摘がありました。
 『指輪物語』でことこまかに描かれるのは、網や鍋釜、エルフのマント、武器などの必要な装備、また携行食のレンバスや、水の調達、そして魚をとったり、ウサギをとったりの、いちいちの食事のことである。[中略]これはリアルな小説ならではのことであって、叙事詩やロマンス物語の主人公たちにはこの問題はほとんど存在しないか、象徴的に片付けられる。(井辻朱美/『ファンタジー万華鏡』 P.76)
 サムは何度もこのことに言及していて「一瞬一瞬が難儀であるような生活をしながら、それが物語(文芸、芸術)に昇華するところを想像し、そこから慰めを得ようとする」(同 P.77)。そしてこの物語(非生活)と現実(生活)の往還によって「トールキンはつまるところホビットの目を通して、ロマンスや叙事詩の物語と、生活の差を描きたかったのではないか」(同 P.78-79)とし、生活者のホビットが、アラゴルンが生きるような物語の世界へどのように関わっていくか、さらには「この世界の読者が、物語世界へ入っていって、どのようにかれらとつきあえばよいのか、ということを追求した枠物語だとさえ言えるかもしれない」(同 P.79)としています。この指摘は面白いなあ。よく言われるように『指輪物語』がやたらと“リアル”なのはこういう見方もあるんだなあ。

・風見が丘での黒の乗り手との対決は、映画版とだいぶちがうなあと思いました。やっぱり映画は見た目にわかるものじゃないとつらいってのがあるのかな。アラゴルンはフロドたちのそばを離れてたし(おそらく裂け谷で素性をはっきり知るまで結構胡散臭いキャラをつづけたかったのかな、と)。黒の乗り手は、フロドがエルベレスとギルソニエルの名前を叫びながら短剣で刺して追い払ってたし。映画も結構繰り返し見たから細かいところがごちゃごちゃになってるなあ……。
| ファンタジー近辺の作品 | 23:10 | comments(2) | trackbacks(0) |
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コメント
指輪物語のテーマ性と旅の目的の寓意性には感動しましたが、描写が退屈だと思ってましたが、食事などのリアルシーンが多いからだと理解出来ました。指輪物語のボードゲームは持ってましたよw
| goldius | 2007/05/18 5:55 AM |
 goldiusさん、コメントありがとうございます。
 実を言うと、僕も一回目に読んだときは結構そういうふしがありました。まあ当時ライトノベルばっかり読んでいたせいもあってそもそも読むのが結構大変な上に、やたらと蛇足なんですよね(笑)
 ただ、この辺りは上の井辻のような指摘もあるんでしょうし、トールキンが「準創造」と言っていたんですが、別世界をがっちり造るという点もあるんだと思います。
 はっきり言って(僕にとっては)背景情報が一読でつかむには多すぎるし、蛇足がたっぷりなんで、再読のほうがずっと面白かったんですよね。なので、よかったらgoldiusさんも、なんて言ってみたりして(笑)
| 智洋 | 2007/05/18 4:49 PM |
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